Love Novel

サンプル

1.日常

 午後3時、正規の授業もHRも済んだ後の、放課後の高校。一部の生徒は帰宅の途に就き、また別な生徒は部活動にいそしむ時間。グラウンドや体育館には、威勢のいい運動部員のかけ声が響き渡っている。それとは対象的に、敷地の一角に建つ文化部棟では、文化部の部員達が静かに寄り集まっていた。

 日々練習に明け暮れる運動部と違い、平日の文化部は、一見活動らしい活動が目につかない。演劇や吹奏楽といった一部の部を除くと、部室に集まって話をしているくらいにしか見えないところがある。――いや、実際おしゃべりだけに終始してしまう時もあるだろう。

 恵理がいる文芸部も、時に静かで時に賑やかな、そんな文化部の一つだった。

 部員達は毎日、放課後部室に集まり、いろいろな事を話す。授業の事、家族の事、先生の事、クラスメートや友人の事、自分の趣味の事、そして、最近読んで面白かった本や、これから書いてみたい話の事など…。楽しさの余りついつい時が過ぎるのも忘れてしまう。恵理は、他の部員達と一緒に、夢中になって話すのだった。

「ねえ、みんな」

 話しこんでいると、ある時、すっと横から声がかかる。

「もう時間遅いわ。そろそろ支度しましょう」

 声の主は、部長の鈴木祥子だった。彼女は、時間を示すように、腕時計の文字板を軽く叩いて言った。その声に促されるように、部員達は立上り荷物を取って帰り支度を始めるのだった。

「さて、じゃあ、鍵を」

「はい」

「…あら、あの小さな鞄は誰の?」

「あっ、すみません、それ私のです」

 一人の部員が、慌てて部室に取りに戻る。周囲に軽く笑い声が上がった。戻って来た部員は顔に照れ笑いを浮かべ、部長も軽く微笑んでいた。

「何やってるのよ」

 つられて、恵理も笑った。

 明るい笑顔の絶えない、そんな文芸部を、恵理は大好きだった。

 

 文芸部にいるからといって、部員誰しもに作家になるという夢がはっきりある訳ではない。けれど、物語を書くのが好きで、その好みを共有できる友人を持てるのを何より嬉しく思う、その気持ちは皆に共通していた。

 文芸部は年に一度、文集を出す。はっきり目に見える活動成果といえば、これだけだった。だがその他にも、作品を部員同士で見せあったり、印刷し冊子に綴じて部内で配ったりもしている。そこに載っているのは、詩であったり小説であったり、また小説でも様々なジャンルに分かれていたり、部員の趣味の幅だけ作品の幅があった。友人間でこっそり回覧するようなものなので、部の外には出ないが、しかし部員達はこれが結構気に入っていた。

 ある部員は、西洋風のファンタジー小説が好き。またある部員は、現代が舞台の恋愛小説が好き。あるいは、ある部員は、詩が得意。いろんな部員がいる。

 その夜、恵理は自分の机に向かって、少しぼんやりとしていた。目の前には真っ白なノートが広げてある。

「ふう…」

 軽く、ため息が出た。

 恵理は、まだ部内で作品を出した事がない。小説のようなものを幾つか書きかけた事はあるが、どれも話が完結せず、出せずにいるのだった。創作用と決めたノートを前に、ぼんやりと考え事をしていると、時々アイデアのようなものが浮かんでは消える。行けそうだと思えば書きつけてみるが、きちんとした形にするのはなかなか難儀そうだった。

 作品を出さないからといって、怒られる事はないし、けなされる訳でもない。むしろ時には、他人の作品への意見がとても参考になると、信頼されるところもある。それでも恵理は、自分の思う様に作品を書いてみたかった。

(…みんな、うまく書いてるのになあ…)

 脳裏に、親しい部員の顔が浮かぶ。詩が得意な部員、ファンタジー小説好きの部員、その他何人もの顔が浮かんだ。

(…部長も…)

 最後に恵理が思い浮かべた顔は、部長の鈴木祥子だった。少し華奢な体つきで、細面、銀縁の眼鏡をかけ、伸ばした黒い髪を後ろで三つ編みにしている。部の中では、どちらかというと物静かな方だったが、作品の面白さは群を抜いていると言えた。古代中国風の世界を舞台に歴史小説のような作品を書き、部員誰しもがその面白さを認めていた。

 面白い作品を書く賢い部長。いつか、自分もそうなりたい。恵理は、願ってやまなかった。

 

2.或るノート

 梅雨も過ぎ、初夏というには暑さが厳しいある日の教室。教科書を読む生徒の声が響いている。今は5時間目、国語の時間。今日は漢文の授業があっていた。

「はい、よろしい。そこまで。では次を…栗山、読みなさい」

「はい」

 教師が指名したのは恵理だった。彼女は立ち上がり、続きを読み始める。立ち上がると、開け放った窓から軽く吹き込む風で、肩口まで伸ばした彼女の髪と夏服の白いシャツが揺れた。

 成績抜群とはいえない恵理だったが、漢文の授業は結構好きだった。教科書に載っているのは、古い中国の歴史を扱った文章で、物語のように読む事ができる。読むうちに、頭の中にいろいろと想像が浮かぶのだ。

「よし、そこまで。座ってよろしい。じゃあ、これから、今読んだところを説明していくぞ」

 軽い満足感に浸りながら、恵理は席に就いた。教室には、朗読の声に代わって、文法を説明する教師の大きな声が響き渡り始めた。時に、眠そうな顔をしている生徒をたしなめながら、教師の声は教室中に郎々と響く。

 穏やかな夏の昼下がりだった。

 

「あー、はっやく夏休みなんないかなー」

 衣替えを過ぎた辺りから、おしゃべりする一番の話題は夏休みだった。

「バイトしてお金溜めて、遊び行きたーい」

「せっかくの休みなんだから、作品も書かなきゃねえ」

「うーん、分かってるんだけど、でも実際なかなかはかどんないのよねー」

 部員の一人が苦笑いを浮かべる。そうだというように、周りの部員も笑みを浮かべた。

「作品、かあ…」

 ふと思い出したように、恵理はぽつりとつぶやいた。

「私、まだ何にも出してないのよね…」

 文芸部での日々は楽しかった。おしゃべりするのも、他人の作品を読んで感想を伝えるのも。しかし、実際自分で作品を書いて読んでもらった事は、まだ一度もない。

「大丈夫よ」

 そんな恵理に、部長の祥子が声をかけた。

「あんまり焦る事ないと思うわ。急ぎすぎると、かえって何も思い浮かばないものだし。栗山さんの好きなものを、ゆっくり、書けばいいと思うの」

 そう言うと、彼女は軽く微笑んでみせた。銀縁眼鏡の奥で、黒い瞳が少し細められ、形良い唇がゆるやかな弧を描く。とても綺麗な笑顔。その場の空気が澄みきるような、そんな感覚さえするようだった。

「そうよね、そんなあくせくしなくったっていいって、恵理ちゃん」

「そうそう。……でもねえ、あんなにたくさん書いてる部長から、急ぐと何も思い浮かばないとか言われてもねえ」

 親しみを込めた声で、友人達も同調した。明るい声でまぜっかえし、再び笑いを誘う。

 朗らかな話声と笑い声は、絶える事なくいつまでも続いた。

 

「さあみんな、もう結構な時間になってるわ。そろそろ、帰りましょう」

 いつものように、部長が腕時計の文字板を叩き、口を開く。それを合図に、部員達は立ち上がりめいめいの荷物を手もとに寄せた。

 夏の日は高い。まだ昼間かと思うほどに明るく晴れ渡った空の下、部員達は文化部棟を後にした。職員室に鍵を返し、下駄箱で靴を履き替えて、校門へと歩いて行く。

「それでは、失礼します」

「また明日ね」

 校門のところで、一団は挨拶を交わして別れた。歩きの者、自転車の者、バスを使う者、それぞれ分かれて自分の家路に就くのだった。

 自転車通いの彼女は、校門で友人達と別れると、校舎の脇の駐輪場へと向かった。自分の自転車を見付け、鍵をいじっていると、一足先に自転車に乗った友人が横をすり抜けて行く。

「恵理ちゃん、ばいばい」

「おつかれー、またねー」

 にこやかに挨拶を交わした後、自分も自転車に乗ろうと鍵を探るのだが、肝心の鍵が見当たらない。彼女は困って、立ち尽くした。

(鍵がない… どこかで落としちゃったんだ)

 彼女は少し首をかしげるようにして、考えた。鍵を落としたのは、教室か、部室か、外か。教室に居る間は、鍵はあったような気がする。とすると。

(部室に行って探してみよう。)

 そう決めると、彼女は荷物を手に取り、足早に校舎へと戻って行った。

 職員室で鍵を借り、部室へと向かう。グラウンドではまだ運動部が様々に練習しているが、しかし文化部棟はもうひっそりと静まり返っていた。人気のまったくなくなった廊下を、彼女は独り黙って歩いた。

 部室の鍵を開け、中に入って探し始めると、意外なほどにあっさりと自転車の鍵は見付かった。何の事はない、自分が座っていた椅子の近くに落ちていた。騒いでいる最中に何かのはずみで落とし、それに気付かなかったのだろう。

「……なーんだ」

 あまりにあっけなく見付かって、恵理は拍子抜けしたように、軽く笑った。

 

「ふう……」

 せっかくここまで来て、即座に帰るのはなんだかもったいない気分だった。彼女は床に荷物を置くと、そっと椅子に腰を降ろした。

 遠くから運動部員のかけ声が響いて来る。それが、文化部棟の人気のなさを一層際だたせているように聞こえた。日は傾き、窓から斜めに差し込む光は黄色からオレンジ色に変わり始めている。改めて見回してみる部室は、がらんとしていて、もの寂しい。

(あれ?)

 ふと彼女は、床に落ちている1冊のノートに気が付いた。部員の誰かのものだろうか。立って手を伸ばし、拾い上げて、何気なく表裏見てみるが、名前も何も書いていない。

(誰のだろう……?)

 それは、まったく何の飾り気もない地味な大学ノートだった。表紙と裏表紙は青無地で、名前はもちろん、題名も、飾りに貼るシールなどもない。しかし、見た目それなりに使い込んであるようだった。

 彼女の心に、少しだけいたずら心が生まれた。このノートは、多分、誰かの作品下書き用のノートに違いない。アイデアを盗用するのは悪いけど、ちょっと覗き見して一足先に楽しむくらいなら。

(落とし主の誰かさん、ごめんね、ちょっと中見せてね……)

 好奇心に目を輝かせ、少し罪悪感も覚えつつ、彼女は手に持ったノートをそっと開いた。

 そこには、几帳面さの感じられる字で、文章が書き綴ってある。勉強用のノートなどではない、やはり作品の下書き用ノートだった。

(この字……部長のだ!)

 それは、部長の鈴木祥子の字だった。部長の新作をちょっとだけ覗き見できる。彼女の心は踊った。

 ――だが、読み進める内に、彼女の表情は驚愕のそれに変わっていった。

 あの部長が、こんな小説を書くなんて。信じられなかった。衝撃の余り、混乱し、ただ驚くばかりだった。――そして、知らず知らずの内に、恵理はその作品から目が離せなくなっていた…

 

 持って帰ってしまった。本当は、いけない事だと分かっていたのに、持って帰ってしまった。

 それは衝撃だった。憧れの鈴木祥子、知的で綺麗で優しい部長、その彼女が、よりによって、人知れずあんな作品を書いていたなんて。

 それは衝撃だった。そして同時に、衝動だった。もっと読みたかった。ゆっくり、じっくり読んで、味わいたかった。はっきりそう感じた訳ではない。だが、衝動的にノートを持ち帰ってしまった後、じわじわと、欲望が心の中に湧き出て来るのだった。

「ふう……」

 ほんのりと頬を上気させ、彼女は軽くため息をついた。時間は夜遅く、家族皆自分の部屋に引き下がるか、寝るかしている時間帯である。恵理はパジャマに着替え、自分の部屋にいた。勉強机に就いて、祥子のノートを開いていた。

 一口で言えば、みだらな内容の小説だった。主人公は、内気な女子高校生、同じクラスの男子に片想いをしていたが、その気持ちを伝えられずにいる。募る想いは彼女の心と体をかき乱し、毎夜、激しい自慰にふける――

「はあっ……」

 話の中心を占めているのは、主人公の恋愛ではない。むしろ、自慰の場面こそ中心だった。長々と、じっくりと、ねっとりと、書き込んであった。その場面に心奪われ、恵理は食い入るようにノートに見入っていた。

 体にぴったりとフィットしたレオタードは、皮膚と合わさったかのようで、手の動きをそのまま皮膚に伝えてくる。軽く触れただけでも、撫でただけでも、指の動きがはっきり分かる。
「あっ、ふぅぅ……」
 乳房を、揉むというよりは撫でるのに近い動きでさわる。女の証としてふっくら盛り上がったそこは、入浴や着替えの時の他は触れる事も稀な場所だった。けれど今は、こわごわとだが、そこを触っている。それも、深紅のレオタードを着て、ベッドに横になって。

 恵理の心臓は高鳴っていた。恥ずかしさのせいか、心なし、顔が火照っているような感覚があった。呼吸は浅く、早い。落ち着こうとしても、落ち着かない。

(わたし、すごくどきどきしてる…小説読んで…)

 くらくら来るような甘い興奮が、静かに彼女を犯していく。目の前の小説に心奪われ、ぼうっとしたような意識の中、ノートから目を離す事ができない。

 どきどきと気分が高まるにつれて、肌の感覚が鋭くなっていく。胸を触っていると、時々、目の奥から鼻へつんと来る甘酸っぱいショックがある。はっきり「気持ちい」とまでは行かないが、不快でもない。
 彼氏に触られる時も、こんな感じなんだろうか……。彼女は目を閉じて、片思いの彼の事を考えた。その間も、胸を触る手は片時も休めない。彼女の手には次第に力が入ってきていた。最初は優しく触るだけだったのに、今ではもっと強く、レオタードに皺が寄るくらいに強く胸を揉んでいた。
「あ、んっ」
 ついに、彼女の口から小さな喘ぎ声が漏れた。彼女の心は、オナニーにのめり込んでいた。

「お、オナニー」

 それは、ごく小さな、ささやくようなつぶやき声でしかなかった。だが、口にした瞬間、彼女はその事実に驚き、はっとして右手を口に当てた。軽く上気していた顔が、みるみるうちに熱く紅潮していく。それまで、思い描きはしても決して発する事はなかった性の単語。それを、彼女は初めて口にしたのだった。どうしたらいいか分からなくなり、不意に不安が押し寄せた。

 …いや、本当は、どうしたらいいのか分かっていた。どうしようもなく興奮している自分も、何をしたいのかも、分かっていた。だがそれを認めず、またその余りの激しさから目を逸らしていただけだった。

 恵理の中で、何かが膨れ上がり、防波堤を音もなく崩し始めていた。息苦しさを覚え、彼女は表情を歪めた。結んでいた唇をわずかに開け、息をした。呼吸はたちまち荒くなり、胸が大きく上下した。息は不規則で、わずかに震えているようだった。

 体がじんじんと熱い。耳鳴りがするような錯覚に陥る。左手から、ぱさり、と祥子のノートがこぼれ落ちる。彼女は右手で口を覆った姿勢のまま、まるで操られているかのように、左手をそろそろと下へ降ろしていった。

 パジャマの上から、そっと、自分の股間に触れた。

「んんっ!」

 その瞬間、恵理の体はぎゅんと硬直した。反射的に目をつぶり、強く口を押さえた。体中の毛が一気に逆立ちそうな強烈な刺激に、彼女は思わず股間から手を離した。

(なに、今の…)

 彼女は口を押さえたまま、はあはあと肩で息を継ぎ、どうにかして落ち着こうとした。彼女にだって、オナニーの経験はあるし、その快感も知っている。だが、今襲って来た刺激は、これまでのどんな行為で味わったものよりも強烈で、熱かった。未知の経験で、不安と恐怖が心に生まれた。自分が自分でなくなってしまったような、そんな感じだった。

 だが、心臓の高鳴りはおさまらない。肉体のたぎりもやまない。心と体の双方が、恵理を追い詰める。

 数瞬の惑いの後、恵理は、再び左手を動かした。その行く先は、股間だった。

「ぐふっ!!」

 咳こむような鈍い喘ぎが、口から漏れる。しかし今度は手を離さない。もう一度股間を押し、もう一度、そしてもう一度押す。硬直した体がびくん、と震え、顎が上がった。開いた口から唾液が飛び、右の手の平をべっとりと濡らした。

 ついに彼女は、体のうずきに屈した。指先で強く股間を押さえると、そのまま、ぐりぐりと円を描くように動かした。噴き出すような強烈な刺激が、股間から頭までを直撃した。

「くふぅ …あっ、はあぁぁ」

 股間を触り続けていると、徐々に、手足の末梢が痺れるような感覚になった。体からは力が抜け、波間を漂うな浮遊感があった。彼女は椅子の背にぐったりと寄りかかり、頭を後ろに垂らした。口を押さえていた右手はずり落ち、力なく開いた口が露わになった。唇とその周りは唾液で濡れ、てらてらと光っている。閉じられていた目は半開きになり、焦点の合わない視線を天井に向けていた。

「あはぅ…きもちい…」

 快感に溺れた声色でつぶやき、恵理はさらなる行動に出た。椅子に寄りかかった姿勢のまま、左手でズボンの腰周りゴムを乱暴に引っ張った。できたすき間に右手を突っ込むと、何の遠慮もなく、股間に伸ばした。

 右手は獣のように動き、さらにショーツの中へと侵入した。これまでの経験で覚えた、最も快感を覚える場所を目指して。薄い布の下を潜り、程良く生えた恥毛の叢に分け入った。

「はあ、はあっ、はぁ、あんっ」

 指先に、滴らんばかりに溢れ出た粘液の感触がある。生温かく、ねっとりと糸を引くような。それだけでさらに体が熱くなった。彼女は気付いていなかったが、そこはもはや肉を濡らすだけでは飽き足らず、ショーツのクロッチをじゅっくりと濡らし、さらにパジャマのズボンにまで染み出てようとしていた。

 濡れた指先で、恵理は自分の秘部をなぞる。びりびりと来る刺激に顔が歪んだ。柔らかい秘肉の上で指を滑べらせ、ついに、肉襞の頂点にある核を捕らえた。

「くうんっ! はぁっ!」

 椅子の上で、恵理の体がびくんと震えた。弾かれたように足が伸び、椅子の上で不格好に硬直する。体が反って喉に力がこもり、喘ぎ声がかすれた。

 恵理のそこは、刺激と興奮ですっかり熟し、充血して膨れ上がっていた。とどまる事なく溢れ出す愛液でたっぷり濡れ、最高の状態に出来上がっている。恵理は、ほとんど忘我の状態で指先を動かした。縦横に動かすたびに、こりこりとしこった肉芽が転がり、燃える快感が脳まで達した。

「あくっ、だめぇ、はぁうんっ!!」

 彼女は体をのけぞらせたまま、よがり声を上げ首を振った。頭の中がぐちゃぐちゃになって、何も考えられない。表情は歪み、目尻からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

 股間からの刺激で神経はぎりぎりまで高まり、それでも刺激はやむ事なく注ぎ込まれる。熱せられ張り詰めた神経の糸は、極限で、ぷつりと切れた。

「あ、いっ、あ、ああ!」

 その瞬間、恵理の体から一切の自由が奪われた。真っ白な光が頭の中で炸裂したような、何も考えられない強烈なモノに襲われた。椅子の上で、ズボンとショーツに右手を突っ込んだまま、彼女は背をそらした姿勢でびくびくと痙攣した。――息もできない硬直が数瞬続き、それが解けるや、恵理はどさりと椅子に崩れ落ちた。

 そうして。恵理は、壊れた人形のように、椅子の上でぐったりとなった。体に全く力が入らず、秘部に伸ばされた右手はそのまま、頭は前にがくりと垂れている。時折、余韻が襲って来て体をぴくんと震わせた。瞳からは意志の力が消え、唇はだらしなく開き、乱れた髪が汗と涙で濡れた顔に落ちかかる。嵐が過ぎ、彼女は、虚無の中に沈んで行った。

 
 
つづく

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