レオタードの情事

 

1.序

「…では次の文章、ええと。皆瀬さん、読んで下さい」

「はい」

 指名された皆瀬涼子が席から立ちあがり、教科書を読み始める。かすみは、教科書を見るふりをしながら、立っている彼女にそっと視線を向けた。

(涼子…)

 彼女の澄んだ声を聞いているだけで、かすみの心臓はとくとくと波打った。透き通るような白い肌、整った顔立ち、わずかに茶色がかったセミロングの黒髪、そして──制服の下に隠された、彼女の豊満な肉体。

 かすみが体操部に入ったのも、動機の半分は皆瀬涼子の近くにいたいがためだった。体操部で練習に打ちこむ涼子の姿は、レオタードで体のラインを浮き出させていることも手伝い、より一層魅力的だった。高校生にしてはふっくらと発達したその肉体は、体操によって柔らかくも引き締まり、しなやかである。きれいな涼子、もっと彼女に近付きたい──。

「はい、そこまで。では続きを、楢崎さん読んで下さい」

「あ、はい」

 突然、教師から指名され、かすみははっと我に返った。ぼんやりと耳にしていた朗読の続きを急いで探し、読み始めた。

(顔、赤くなってる…)

 涼子のことを考え顔に朱が差したのがばれないように、かすみは、教科書に隠れるようにして朗読するのだった。

 

2.百合と涼子

 部活の終り、最後の整理体操の時間。体育館にかけ声が響く。居並ぶ体操部員の中に、かすみもいた。パールピンクの半袖レオタードを着て、練習で苛んだ体を柔軟体操で落ち着ける。

「…お疲れ様でしたー、かいさーん」

 体操が済むと、当番が解散を宣言し、練習が終る。部員達の間からため息をつくような声が上がり、緊張感が緩んだ。後は、練習に使ったタオルやロゴ入りジャケットを持って、おしゃべりなどしながら更衣室に向かうのだ。かすみも心地よい疲れに身を任せつつ、談笑しながら更衣室に足を向けた。

 その時、一足先に小走りに更衣室に向かう人影が見えた。人影はオスカーブルーのレオタードを着て、セミロングの髪を後ろで束ねている。あれは──涼子だ。

「あれっ、涼子どうしたの?」

「ごめーん、今日ちょっと急ぐんだ」

 友人が声をかけると、皆瀬涼子はちょっと後ろを振り向き、申し訳なさそうに手を振った。そのままさっと更衣室に入ってしまった。

 かすみ達が更衣室に入った時、涼子は既に制服に着替え終わり、ロッカーの鏡を見ながら手早く髪を梳かしていた。皆がわいわいと自分のロッカーに向かい、レオタードを脱ぎ始める中、涼子は自分の荷物を持って、足早に更衣室の出口に向かった。

「お先ーっ」

「じゃねー」

 出て行き際に声をかけ合い、涼子は姿を消した。

 ──その時はかすみも、まだ何も疑問には思っていなかったのだ──

 

 着替えを終えたかすみは、その日、友人達と連れ立ってお茶しに行くこともなく、素直に帰路に着いた。友人達と違って裏門から出てバスに乗る彼女は、体育館前で皆と別れた後、校舎の裏手を独り歩いて裏門へと向かった。校舎の裏は、芝生を挟んでちょっとした林が広がっており、散歩や昼の食事には丁度いい空間が広がっていた。しかし、部活も終った放課後の今は、誰もいない。

 その時。彼女は、林の散歩道に、2人連れで奥へと歩いていく人影を見つけた。着ている制服と持っているかばんから、ここの高校の生徒である事は確かだった。だが──かすみは立ち止まり、首を傾げた。こんな時間に、林なんかに何の用があるの?

 2人は、林の煉瓦敷きの散歩道を、奥へと歩いていく。林の奥には、ベンチを備えた広場があり、そこから入口に戻る別な散歩道が伸びている。散歩道は林の中をぐるりと一周しているだけで、大したものはないはずなのだ。

 かすみは少しの間考えた後、2人の後を尾けて行くことにした。

(あの2人…多分、アレよね)

 人気のない時間帯に、わざわざ人気のない静かな林に入っていく2人連れ。かすみにその経験はなかったが、事情は飲み込める。かすかに罪悪感を感じながらも、つい、興味にかられて後を尾けてしまう。

 先行する2人のうち、1人は、すらりとして背が高く、背中に艶やかな黒髪を垂らしていた。体の前で、両手でかばんを持っている。もう1人は、中背という感じ、髪はやや茶色がかった黒で、肩までのセミロングだった。右手にかばんを持ち、左肩からも別なかばんを提げている。そして、彼女の後姿に、かすみは見覚えがあった。

(え……まさか……)

 嫌な息苦しさを胸に覚えながら、かすみは2人の後をつけていった。2人は、尾けて来るかすみに気付いた様子もなく、散歩道先の広場へと入っていった。かすみは散歩道から外れて木立の中に入ると、木の幹に隠れるようにして2人の様子をうかがった。2人は並んで歩き、少し奥まったベンチのところまで行って、立ち止まった。そこは、かすみから見て、丁度斜め前から2人を観察できる位置にあった。

 ベンチに座ろうとして向き直る2人。木の幹に隠れたかすみは、2人の顔を見て驚愕した。かすみから見て左手側、背の高い1人は、相馬百合。茶道部の部長を務め、かすみの隣のクラスの生徒だった。そしてその横には──かすみの悪い予想通り、皆瀬涼子がいた。

 2人はかばんを地面に置くと、寄り添うようにしてベンチに腰を降ろした。何か話しているようだったが、声は聞こえない。そのうち、涼子が甘えるように百合の肩に頭を寄りかからせた。すると百合も、涼子の肩を抱き寄せ、彼女の髪にキスするように顔を寄せた。

 百合の左手が、肩から頭へと伸び、涼子の柔らかい髪を撫でる。涼子は幸せそうに微笑み、頭を起こした。そして百合の方を向き、体を寄り添わせ──キスをした。

 長いキスだった。2人とも目を閉じ、唇を開け、舌を絡ませているのが、かすみにもはっきりと分かった。2人はお互いを求めて頭を動かし、舌を蠢かせた。寄り添う涼子の体が徐々に弓なりになり、それにつれて百合の体が上にかぶさっていった。百合の手はいつの間にか涼子の腰に回され、そっと抱き寄せていた。

(いや……やめて……)

 他人に身を任せる涼子。そんなはずではなかった。信じられなかった。あの皆瀬さんに限って── 激しいショックに打ちのめされながらも、しかし、かすみは目を逸らすことができない。背中と喉を反らしてキスする涼子の横顔は、やや苦しそうに目を閉じ、白い肌にはかすかに朱が差し、また少し汗ばんだところに黒髪が張りついていた。なまめかしさすら漂わせ、かすみの視線を釘付けにした。

 味わうようなたっぷりとしたキスが終り、2人の唇が離れた。涼子は顔を上気させ、うっとりとした表情で百合を見上げる。対する百合は、顔色をほとんど変えず、口元に涼し気な笑みを浮かべて涼子を見つめている。

 涼子は一旦百合から離れると、改めて、体を丸めるようにして百合に寄り添った。百合の肩に頬を載せ、続けて、ブラウスのボタンを外し始めた。

(涼子……!!)

 かすみの心臓は激しく波打った。口が渇き、耳の奥が熱くなる。

 涼子はブラウスのボタンを外し終わると、次にスカートのファスナーを降ろした。そして座ったままホックを外し、ずり降ろすように脱いだ。続けてゆっくりとブラウスを脱いでいく。その下から現れたのは、レオタード姿の涼子だった。部活の時そのまま、ぴったりとしたオスカーブルーの半袖レオタードを着て、流れるような体のラインを浮き立たせている。かすみが欲しくてやまない、涼子だった。

 涼子がレオタード姿になると、百合は左手で彼女を抱き寄せ、右手でじっくりと彼女の体を撫で始めた。最初は腹を、続いて太腿、さらに、レオタードの上から、彼女の秘部を撫でた。

 初め百合の手の動きは小さかったが、それが徐々に大きくなっていく。肩に回した左手を、涼子の左腋からくぐらせて、胸に触れる。右手は太腿と秘部を大胆に触り、時にレオタード上から敏感な場所に指を突き立てた。涼子は百合に身を預けたまま、頭を後ろに反らせた。声は聞こえないが、快感に喘いでいるのは明らかだった。

 盗み見ているかすみの体にも、異変は忍び寄っていた。木の幹に隠れる体を左手で支えつつ、右手はいつしか、ブラウスの上から乳房を押さえていた。

 百合が、涼子の耳元に唇を寄せた。何かをささやきかけているようだった。涼子は聞こえているのか、目を閉じ、口を半開きにしたまま、反応を見せない。百合はささやきかけながら、右手を引き上げると、不意にレオタードを脱がせて涼子の右肩を露にした。そしてそこから、右手を潜りこませ、涼子の右の乳房を直に揉み始めた。涼子の体がぴくん、と反応し、口が開いた。

 百合は大胆な動きで、涼子の両の乳房を揉みしだく。右、左、また右。レオタードのナイロン布の下で、百合の右腕が妖しく動いた。涼子は喉を反らすと、いやいやをするように首を左右に振った。彼女の手は、いつの間にか自分の下腹部に伸び、レオタードの上から秘部を擦っていた。

(いやらしいわ、涼子……)

 かすみは木の幹に隠れたまま、小さくかたかたと震えていた。涼子が汚され、奪われたという怒りと、情事を盗み見ることから来る体の火照りが、入り混じって彼女を責める。制服の上から胸を押さえていたかすみの右手は、知らず知らずの内に乳房を揉み始めていた。こみ上げてくる甘いうずきを意識し、彼女は自分の行為にはっと気がついた。

(えっ、私ったら……どうして?…あの2人を見たせいなの?)

 欲望に促されるように右手が下に降り、恐る恐る、スカートの上から秘部を押さえた。その瞬間、鈍い頭痛にも似たずきんと来る衝撃が走り、続いて温かい快感がじわじわと広がって行った。

(ああっ……やだ、私、そんな…)

 自分の体に対する困惑と羞恥と嫌悪は、しかし膨れ上がる欲望を押さえることはできず、かすみの右手はさらにスカートの中へと侵入していった。ショーツの上から陰部に触れると、そこはもう湿り気を帯びており、刺激に鋭く反応した。彼女の顔は泣きそうにゆがんだが、指は2度3度と陰部を撫で続けた。

(だめ……がまん、できない…)

 彼女は前屈みになると、左肩を木の幹に当てて体を支え、開いた左手でブラウスのボタンを外し始めた。目は、ベンチの2人をじっと見つめていた。

 涼子を弄び続けていた百合は、涼子が自分で秘部を擦り始めたのを見て、彼女からすっと離れた。そして涼子の手を優しく押さえ、秘部から離させた。少し気の戻ったらしい涼子は、目を開け、百合の方を見て口を開いた。その顔はやや苦しげで、汗が流れ落ちていた。

 二言三言言葉を交わした後、涼子はゆっくりと立ち上がった。立ちあがると、彼女の豊満な体のラインがくっきりと見える。秘部は濡れてわずかに変色しているように見え、右肩は脱がされて露。林の中で、密かにレオタードの情事にふける涼子の姿。

 涼子は、そのまま百合の方に向き直り、膝立ちになった。少しの間そのままの姿勢だったが、よく見ると、いつの間にか靴と靴下を脱いだ百合の右足が、涼子の秘部を苛めていた。裸足がレオタードの中に潜りこみ、指で秘部を捏ね回している。涼子はうつむいて足を受けいれ、次に、体を傾けると、ベンチに座った百合の足の間に顔を埋めた。

 かすみは木に寄りかかったまま、食い入るように2人を見つめていた。声を出さないように歯を食いしばり、肩で荒く息をついていた。彼女の左手は、ボタンを外した制服の中に伸び、ブラの中に手を入れて、乳房を直に揉んでいた。右手はスカートの中に伸び、こちらはやや遠慮がちに、ショーツの上から濡れた秘部を擦っていた。直接触ると、声が出そうで怖かった。

 かすみは、ブラをずらすと、改めて乳房に触れた。突き立った乳首を指でつまむと、ずんと来る刺激が背筋を通りぬけた。かすみは益々表情がゆがむのを自覚しながら、乳首をしごくようにして乳房を揉んだ。我慢する体がぶるぶると震え、スカートの中の右手は溢れ出す愛液を感じた。

 眼前では、百合が涼子の奉仕を受けている。百合は両手で涼子の頭を押さえながら、うつむいて目を閉じ、口は真一文字に結び、刺激に耐えているようだった。涼子の秘部を足指で捏ねはするが、集中力を切らさないために、その動きは途切れがちだった。

 そのうち百合の顔に朱が差し始め、きりっと結んだ口が半開きになった。苦しげに眉を寄せ、体がぴくん、ぴくんと反応していた。やおら、百合は顔を上げ、閉じた目にぎゅっと力をこめると、両手で足の間から涼子の頭を押し離した。

 わずかの間、百合はがくりと顎を垂れ、肩で息をしていた。涼子は膝立ち姿勢のまま、百合の手に頭を預け、見上げる姿勢で待っていた。やがて百合は少し頭を上げ、上気した顔を見せた。務めて冷静そうな表情をしつつ、口元に笑みを浮かべ、何事か涼子に言ったようだった。

 すると、涼子がすいと立ちあがった。2人が体位を改める間、かすみは手の動きを止め、体を落ち着けながらじっと観察した。立ちあがった涼子は、百合の左横の位置に戻り、今度はベンチ上に身を横たえた。右足をベンチ上に立て、左足はベンチから垂らして股間を開く、淫らな姿で横たわった。

 百合は座ったまま涼子に近付くと、涼子の股間部から、左手をレオタード内にぐいと突っ込んだ。そのまま、陰部を指で直接いじっているらしく、涼子は体を大きくのけぞらせた。涼子の秘部を苛みながら、さらに百合は右手を伸ばして彼女のレオタードを脱がせ、アンダーウエアの肩ひもも外し、乳房を剥き出しにした。形良く盛り上がった胸の双丘の先で、ピンク色の芽が膨らんでいる。百合は、白い肉丘をわし掴みにし、親指と人差指で頂上の芽をしごき上げた。涼子の体がびくびくと痙攣し、彼女の口が大きく開いた。

 かすみも、再び自分の体に手を伸ばしていた。右手はついにショーツの中に侵入し、溢れる愛液で指を濡らしながら、そろそろと秘部を撫でる。左手は乳房と乳首をぎゅっと握っている。彼女の体は硬直し、今や倒れこまないよう両足に力を入れて、肩口を木の幹に押しつけていなければならなかった。

 ひとしきり涼子をなぶった後、百合は、自分も横になり、自分の秘部を涼子の秘部に押し付けた。さらに自分の左足を涼子の右足に絡みつけ、2人をしっかと結びつけた。いくらもしないうちに、2人はお互い腰を擦り合わせ始めた。

 2人の動きはみるみるうちに激しくなっていく。涼子はベンチ上で完全にあお向けになり、心持腰を持ち上げるようにして、横方向に動かしていた。下半身に青いレオタードを着たまま、上半身が脱がされて露わになったその姿は、清らかさのかけらもなく淫らで、欲情を誘った。頭は力なく垂れ、潤んだ目と口が半開きになっている。彼女は、淫靡な悦びに完全に身を委ねて見えた。

 百合は、右側を下に横臥するような格好で、腰も右側を下にして、上下方向に動かしていた。靴は脱いでいたが、制服は着たまま、表情はと見ると、やや顎を上げて、ぎゅっと目をつぶっている。最低限自制を効かせて愉しむ姿がそこにあった。

 かすみは、指先に濡れて膨れ上がった秘部を感じた。指を動かす度にぬちゅ、ぬちゅっという猥音がして、愛液が手を伝って流れ落ちる。背中から耳の後ろに至る熱い痺れが、彼女の中で刻一刻と高まっていった。かすみは思わず口を開け、吐息を漏らした。

 快感に酔うかすみの眼前で、ベンチの2人は絶頂へと駆け上っていった。腰の動きがみるみる激しくなって行く。そしてかすみも、体全体を硬直させて頂点を迎えつつあった。全身の火照りが益々高まり、衝き動かされるようにして、彼女はぬめった指で陰核に触れた。その瞬間、まるで電撃のような強烈な刺激が股間から背筋へと通り抜け、彼女の頭を白くする。

「くうっ、んっ、ふっ」

 ベンチの2人が、体をびくびくと波打たせた。2人に応ずるように、かすみも快感の絶頂を迎えた。力を入れて目を閉じ、歯をくいしばって、彼女はひたすら声がもれるのを堪えた。体が痙攣し、鼻から激しく漏れる息が熱く感じる。絶頂の白い嵐が過ぎ去ると、体から一気に力が抜け、彼女は木の幹によりかかったままの姿勢でずるずると崩折れた。ベンチでは、同様に2人が力なく横たわっていた。

 

 少しの間、その場でかすみは虚ろに座りこんでいた。嵐のような感覚に打ちのめされ、何も考えることができなかった。

 不意にかたかたと物音がして、彼女はようやく我に返った。木の陰にいた事を確認し、そっとベンチの方を覗いて見ると、そこでは既に支度を整えた百合が、広場に立って涼子を待っているところだった。ベンチに座った涼子は、ブラウスの最後のボタンをはめ終えると、髪に手櫛を入れる。そうして、うつむき気味のまま立ちあがると、左肩に部活のかばんを、左手に通学かばんを提げ、百合の元に歩み寄った。かすみの見ている前で、涼子は、はにかみ気味に自分の右腕を百合の左腕へからませたのだった。

(!!)

 陶酔の余韻漂う涼子の表情が、かすみの心を締め付ける。やがて、腕を組んだ2人は元来た散歩道を戻り始めた。かすみは、2人から見えないよう木の幹に隠れたまま息を殺し、通り過ぎる2人の様子を伺った。過ぎ行く一瞬見えた百合の横顔には、悠然とした笑みが浮かんでいた。美しいものを奪って勝ち誇る、そんな笑顔に見えた。

 次の瞬間、かすみの心に言い知れぬ憎悪が渦巻いた。

(あの女、涼子を……)

 歩み去る2人、そのうち、上背のあるすらりとした後姿を、かすみはいつまでも睨み付けていた。

 
 
続く
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