続・あこがれの競泳水着(3)

 

4.償い

 その日は、朝から最悪だった。

 前夜、彼女はなかなか寝付くことができずにいた。ようやく寝ついても、うなされて満足に眠ることができない。体の疲れはまるで取れず、気分はささくれ立っていた。ごくささいな事から癇癪を起こし、母と大喧嘩をして、飛び出すように家を出た。

 学校に着くまでの間、いつもならどこかで顔を会わせるはずの友人達と、今日に限って誰とも顔を会わせなかった。それは単に登校の時間が微妙にずれただけ、少しばかりタイミングがずれたに過ぎないのだろうが、しかし今の彼女は被害妄想にかられない事はなかった。

 結局、ずたずたになった心を独り抱えたまま、彼女は1日を過ごしていた。ほとんど誰とも口をきかず、不真面目そうに見えた授業態度を教師から注意されなおさらふてくされながら、彼女は孤独に過ごしていた。同じクラスの友人も、水泳部の同級生も、誰も彼女に近付いて来なかった。友人達は、別に彼女を無視している訳ではないのだろうが、しかし彼女は孤独感を深めていった。

 まるで、周りじゅう皆が彼女を見放しているように思えた。先輩に手を出したレズ女、汚くていやらしい。皆が陰口を叩いているように思えた。

 

 放課後。打ちのめされ、抜け殻のようになった彼女は、虚ろな足取りで下駄箱に向かった。今日は木曜日なので、部活はない。明日の部活はどうしよう――部活どころか、もう学校にも来たくない――

 下駄箱の扉を開けた時、最初、自分の靴の上に封筒が載っている事に気が付いていなかった。伸ばした手の先に異物感を覚え、それでようやく封筒の存在に気付いたのだった。

(……?)

 それは白い、何の飾り気もない封筒で、表にはボールペンで「友野奈緒様」とだけ書いてあった。口のところは丁寧に封がしてあり、簡単に中身を改める事はできない。ふと裏を返して、その隅に書いてある差出人名を見た時、彼女は息が詰まる程の驚きに襲われた。

 そこには、「日野由佳里」と、書いてあった。

 

 木曜日の放課後。部活のない、静かな屋内プール。高窓から差しこむ日の光が揺れる水面で照り返り、不思議に輝いている。

「失礼、します……」

 小さな声で挨拶すると、奈緒はそっとプール室に入っていった。プールの中には、誰もいない。普通なら1人で練習しているはずの由佳里の姿も、見えない。中はしんと静まりかえっていた。

 辺りを見回した奈緒の目に、プールサイドのベンチに座っている人影が映った。…由佳里だった。水着の上にジャージの上着を着ただけの見慣れた姿で座っている。だが、長い髪は後ろで束ねただけで、丸めてはいない。彼女は、入口から入って来た奈緒をじっと見つめていた。

 奈緒が近付いて行くと、彼女は、自分の隣に座るよう手で促した。奈緒は軽く頭を下げ、荷物を置いて、腰を降ろした。

「……来てくれて、ありがとう」

 奈緒が腰を降ろすと、由佳里は静かに口を開いた。座る位置を少しずらし、奈緒の横顔をまっすぐ見つめた。

「今日はね、友野さんに聞いてもらいたい事と、お願い事があるの」

「……何ですか」

 頬の辺りに由佳里の視線を感じながら、奈緒は少しぶっきらぼうに答えた。心に疼く罪悪感から、顔は自然とうつむき気味になっていた。

「あのね、私と、水上さん……いえ、舞のこと」

 奈緒の心臓がどきん、と高鳴った。

「昨日、私と舞がどういう関係なのか、って言ったわね。答えてあげるわ」

 由佳里の言葉は静かだった。

「彼女と私は、恋人じゃないけど、特別な関係なの。そうね、もう1年になるわ。まだ、誰にも話してないけど……」

「……どうして、あたしには話してくれるんですか」

「なぜって、あなたには、私達の事を知られてしまったから」

 由佳里の声が、わずかに揺れた。奈緒が視線だけで彼女の顔を見ると、少し悲し気に歪んでいるのが見えた。

「舞は、私にとって友達とか後輩とかいう以上に大事な存在なの。その、体を重ねる事も、時々あるわ」

 そこまで言って、由佳里は一旦口を閉ざした。

 奈緒も黙ったまま、下を向いていた。自分が惨めだった。

「……ねえ、分かってくれるかしら。舞と私の関係。だから…あなたの気持ちには、答えられないの……」

 由佳里としては、できる限り優しく言ったつもりだったのだろう。しかし、その言葉は、奈緒の心に深く突き刺さった。涙がこぼれそうになり、奈緒は思わず顔を背けた。惨めな気持ちが膨れ上がり、彼女の心を暗く染める。

「……それで、その、舞の事なんだけど……」

 由佳里の話はまだ終わっていない。声に心配の響きをこめつつ、彼女は様子を伺うように口を開いた。

「彼女の事は、誰にも言わないでいて欲しいの。お願い、分かって……」

 奈緒はもう我慢ができなかった。惨めな、強請屋のように見られる自分が、大嫌いだった。こんな話はもう聞きたくなかった。彼女は黙ったまま返事もせず、床に置いた荷物を取って立ち上がった。

「待って! ただで黙っておいてとは言わないわ!」

 立ち去ろうとする奈緒の手を掴み、由佳里が叫んだ。一瞬言葉の意味が分からず、奈緒は由佳里の方を振り向いた。

 目の前の由佳里は、右手で奈緒を腕を掴み、握り締めた左手を胸に当て、思いつめた表情をして立っていた。眉が寄り、目には不安の色が一杯に浮かんでいる。

「あなたの気持ちには、答えられない…… でも、黙っていてくれるなら、出来る限りの事はするわ。その、私の……」

 由佳里の息が、喘ぐように乱れた。恥ずかしそうに顔を背け、奈緒から視線を逸らした。

「……私の体を、好きにしていいから……お願い、それで我慢して。舞だけは傷つけないで……」

 由佳里の言葉に、奈緒は茫然とした。由佳里がここまで思い詰めているのを知って、眩暈が来るような衝撃を覚えた。同時に、そこまで由佳里を追い詰めた自分がたまらなく情けなかった。奈緒の目から、堪えていた涙が溢れ出した。

「……せんぱい、ごめんなさい」

 奈緒は荷物を取り落とし、その場に泣き伏した。

「あ……あたし、せんぱいが欲しくて、欲しくて……水上せんぱいが、うらやましくて……悔しかったんです……脅すつもりなんて、全然なかったのに」

 それから先は、声にならなかった。悔しさと惨めさで、後から後から涙が溢れてくる。どうしようもなく、彼女はうずくまって泣き続けた。その肩を、由佳里がそっと抱いてくれるのを感じながら。

 

 夕暮れ時、赤い西日が差すプールサイドに、2人は座っていた。足を崩して座る由佳里、その胸に、甘えるように寄りかかり抱きついている奈緒。黙ったまま、じっと。

 どれくらいかたって。奈緒がもぞもぞと動き始めた。真っ赤に泣きはらした目を隠すように、うつむいたまま由佳里の胸から顔を離した。

「せんぱい……心配かけて、ごめんなさい」

「いいのよ、もう。……でも、もうあんなことしちゃダメよ。分かった?」

 打ちひしがれて謝る奈緒の顔を由佳里が覗きこみ、軽く茶化すように額をつついた。自分を元気付けようとしているのが分かり、奈緒はたまらなく嬉しかった。指先で涙をぬぐうと、もう一度由佳里に抱きついた。

「もう、絶対しません。あんなこと。水上せんぱいのことも、誰にも言いません…… せんぱい、だいすき」

「ありがとう、奈緒ちゃん」

 由佳里の腕が奈緒の背中に回り、彼女を軽く抱きしめた。このままずっと甘えていたい。せんぱいと一緒にいたい。かなう事のない気持ちが心をよぎり、奈緒の心はちくりと痛んだ。

「……せんぱい、最後に一つだけ、お願いがあるんです。聞いてくれますか」

「ん、なあに」

「一回だけでいいんです。せんぱいの体、私に下さい……」

 

5.奈緒と由佳里

 奈緒の願いに、由佳里は、いいとも、だめとも、答えなかった。ただ、驚きの表情を見せた後、恥ずかしそうに顔を赤らめて目を逸らした。抱きついたまま由佳里の胸に顔を押し当てると、早鐘のように脈打つ彼女の鼓動を感じる。

「……あの時せんぱい、最後にきもちい、って言ってくれた。私、嬉しかった……先輩が感じてくれて」

 由佳里は答えない。黙ったまま、少しもぞもぞと体を動かした。

「せんぱい、体敏感なんですね…… 汗ばむくらいに火照って、すごく素敵だった。いつも、あんなに感じるんですか」

 そこまで言って奈緒が少し体をずらすと、由佳里もぴくん、と反応した。どうやら緊張しているようだった。布越しに感じる彼女の呼吸は浅く、鼓動は早い。

 奈緒は由佳里から体を離すと、膝立ちになり、自分の体に回された由佳里の右腕に手をかけた。

「せんぱい。私ね、オナニーする時いつもせんぱいの事考えてた……。先輩の事考えると、とっても感じるから……」

 そのまま、彼女の右手をゆっくりと制服のスカートの下へと導いて行った。また、自分の左手をブラウスの上から左の乳房に添えた。

「せんぱいとしてる事想像するだけで、あそこがぐちゅぐちゅに濡れるの…指でいじくるととっても気持ちよくて……乳首も立っちゃう……」

 わざと卑猥な言葉を使い、奈緒は少しずつ自分を高めていった。乳房に添えた左手に力をこめると、鈍い快感がじわりと広がり、彼女は少し表情を歪めた。

「水着着てるせんぱい、制服着てるせんぱい、とってもきれい……」

 彼女は左手で胸を揉み続けながら、由佳里の手に添えた右手を、自分の秘部へぐっと近寄せた。瞬間、由佳里の指がショーツ越しに彼女の秘部を押す。つんとした刺激を感じ、彼女は顎を上げて軽く喘いだ。羞恥の入り混じった快感が、奈緒の体に染み渡り始めていた。

「な、奈緒……友野さん」

 最初奈緒にされるがままだった由佳里だったが、感じ始めた彼女を目の前にして、当惑したように口を開いた。

「ねえ、やっぱり…… だめだわ、こんなこと」

「え?」

 尻込みしたようにおずおずと口を開いた由佳里を、奈緒は膝立ちのまま少し不満そうに見下ろした。

「でもせんぱい、さっきは…… 覚悟決めてたんでしょ」

 奈緒の言葉に由佳里は答えず、代わりに恥ずかし気にうつむくのだった。左手を胸のところで軽く拳に握り、右手は奈緒のスカートの下に引き寄せられている。奈緒は、その手が汗ばみ、小刻みに震えている事に気が付いた。

(……せんぱい、興奮してる。)

 奈緒は妖艶に微笑むと、由佳里の右手から手を放した。そうして、彼女が身を引こうとするのに合わせて身を乗り出した。

「せんぱい、怖がらないで」

「あ、だめ……」

 奈緒が由佳里の肩に手を置くと、緊張しているらしい彼女の体はぴくんと反応した。そのまま、奈緒は彼女をそっとプールサイドに押し倒した。

 プールサイドに横たわる由佳里は、やはり奈緒の顔を直視できず、顔を横に向けていた。その顔には朱が差し、少し口を開けてはあはあと息をしている。彼女の恥じらいの仕草に、奈緒の心はさらに燃えた。

「大丈夫、せんぱい。大丈夫…… 今日だけ、私のものになって…… 」

 切なくそう言って、奈緒は由佳里のジャージに手をかけた。彼女の手を押し止めるように由佳里の手が当てられたが、しかし力は込められていない。そのまま、奈緒は由佳里のジャージを胸の方へとずり上げていった。ジャージの下から、徐々に、競泳水着に身を包んだ由佳里の体が現れる。紺色の競泳水着はぴったりと由佳里の肌に貼りつき、彼女のプロポーションを余すところなく目の前に晒していた。

 奈緒は、由佳里のジャージを首のところまでずり上げた。それでも、由佳里は、申し訳程度でもジャージのすそに手を当て、またずり下げようとするそぶりを見せるのだった。

「ね、友野さん、やめましょう、こんなこと」

「友野さん、だなんて。奈緒、って呼んでください……」

 由佳里の言葉を無視し、奈緒は、由佳里の体に覆いかぶさるように自分の体を横たえた。愛しむように、胸の双丘の谷間に顔を押しつける。肌に感じる由佳里の脈動は、これ以上なく激しく波打っていた。

 奈緒はやや体をずらすと、由佳里の正面より心持ち右側へ重心を移した。由佳里の右足太腿を自分の股間で挟みこむようにして、ぴったりと体を密着させる。顔を上げ由佳里の表情を窺がってみると、彼女は頬を紅に染め、口と目をぎゅっと結んで閉じていた。由佳里がこの上なく緊張し、そして興奮しているのが、一目で分かった。

(せんぱい、すてきよ……)

 由佳里の表情を注視したまま、奈緒は、由佳里の体をまさぐり始める。左手で自分の体を支え、右手で、彼女の体を大きく撫でた。腹。股間。脇。胸。大きくじっくりと撫で回し布の感触を愉しむと、次に、右の乳房を力強く揉み始めた。

「んっ、んんっ」

 緊張し敏感になっていた由佳里の体は、奈緒の愛撫にすぐさま反応した。閉じた瞼に力がこめられ、眉間にしわが寄る。唇も目と同じく固く結ばれていたが、しかし声は我慢できず、荒く不規則な息とともに喘ぎを漏らすのだった。

 奈緒はうっとりと由佳里の顔を見つめながら、さらに彼女の胸を愛撫する。丘の下側に手を当て、全体を握りこむようにして揉む。あるいは揉みながら、既に固くなっている乳首を親指と人差し指でつまみ、転がすように苛む。その愛撫に、由佳里はたまらずびくびくと体を震わせた。表情は泣き出しそうに歪み、額には汗の粒が無数に浮いていた。

「ぐっ! んく……」

 由佳里を愛撫しながら、奈緒は、自分の体も同じく興奮している事に気付いていた。秘部が、熱い。まだほとんど触れもしていないのに、もう染み出て、濡れてる。溢れた愛液でショーツが濡れ、秘部にべったりと張りついているのを感じる。いつしか彼女は、両足で挟みこんだ由佳里の右太腿に自分の恥丘を押し当て、淫らに腰を動かしていた。

 腰をグラインドさせるごとに、鈍い刺激が彼女の陰部にじわりと伝わる。しかし、服越しの刺激はあまりに鈍く、膨れ上がる彼女の欲望に応える事はできなかった。ついに奈緒は、由佳里から体を離し、起きあがった。体の疼きに衝き動かされ、手荒くスカートとブラウスを脱ぎ捨てていった。

 下着姿になった奈緒は、立ったまま、そっと自分の股間に手を伸ばした。軽く撫でてみたそこは、ショーツが湿り気を帯び、指先にしっとりとした感触があった。撫でるだけでも背筋に微電流が流れるような刺激が走り、奈緒は喘いだ。

 自分を抑えこむようにはあ、はあと大きく息をしながら、彼女は、足元にぐったりと横たわる由佳里を見下ろした。既に抵抗するそぶりを見せる事もなく、両手はだらりと伸ばされている。顔は紅潮し、汗と涙が交じり合って濡れて光っている。うっすらと開いた目は潤み、熱っぽい視線で奈緒を見上げている。

 首までジャージをずり上げられて競泳水着姿の体を晒し、体を火照らせて無抵抗に横たわっている由佳里。その姿は、たまらなく淫靡で、奈緒の劣情を刺激する。

 極度の興奮で体が小刻みに震えるのを意識しながら、彼女は身をかがめ、由佳里に近付いて行った。もう由佳里は逃げない。再び奈緒の手が体をまさぐり始めても、されるがままだった。奈緒は由佳里の左隣にぺたりと座ると、左腕で彼女の上半身を抱き起こした。首元に引っかかっているジャージを完全に脱がせて水着姿にし、自分の体に寄りかからせる。

 彼女は左腕を由佳里の背中に回して支えると、再び愛撫を始めた。首筋に唇を寄せて舌を這わせ、右手で由佳里の体を撫でる。我慢の糸が切れた由佳里は、水着の上から撫でられただけでも表情を歪め、よがり声を上げた。

「あはあん、んはあっ、はあっ、はう……」

 奈緒の右手は、由佳里の体を撫でながら時折軽く爪を立てて皮膚を刺激し、ゆっくりと下腹部へと降りていった。由佳里は、デルタ部に爪を立てられただけで泣きそうに喘ぎ、秘部を軽く指で押されただけで息を詰まらせた。由佳里のそこはもう止めどもなく溢れ、水着をじっとりと浸すだけでは飽き足らず、プールサイドにまで垂れ始めていた。

 奈緒は由佳里の首筋から顔を離し、彼女の股間に視線を落とした。恥部を覆う布の上で指を走らせるだけで、透明な液が糸を引いて指にまとわり付く。そこは布の下でぷっくりと膨れ上がり、熱を持っていた。奈緒は、少し顔を上げて由佳里の表情を窺がい、また再び股間に視線を落とした。

「は…… あふ……」

 耳に、由佳里の荒い息遣いを感じる。肩に、ぐったりと寄りかかる由佳里の体の重みを感じる。奈緒は、右手の人差し指と中指を、太腿の脇から水着の中に潜りこませた。

「せんぱい…… 指、入れるね」

 そう言うと、奈緒は、中指で由佳里の秘部をずぶりと貫いた。

「がはっ! あっ、くうっ」

 由佳里の背筋がぐっと反り返り、硬直する。さらに、膣内をかき混ぜるようにして奈緒が指を進めると、由佳里は体を大きくびくんと痙攣させ、悶えた。

「ひあああっ、あっあっ、んふああっ」

 滑らかでいながらとろりとまとわりつくような、柔らかい膣壁を指に感じる。そして、あふれ来る温かいぬめりの感触。由佳里の体が、奈緒の左腕に支えられてきれいな弓なりを描く。顎まで仰け反らせ、白く綺麗な喉を晒している。大きく開けた口からはかすれた喘ぎを漏らし、目尻から大粒の涙をこぼした。両腕はぴんと伸びてこわばり、ぶるぶると震えていた。

「あひっ、んっ、い、ひっ!」

 そのまま、由佳里は一気に頂点に達した……

 

 絶頂の嵐の後、由佳里はプールサイドに倒れ伏したまま動かなかった。右側を下にして横たわり、腰から上は少しひねってうつ伏せに寝ている。表情は疲れ果てたように力なく、目は閉じられたまま、開く気配を見せない。体をひねって露わになった背中は、水着が大きくあいていて、なまめかしく素肌を晒してる。そこには由佳里の長い髪が乱れてばらりとかかり、行為の余韻を漂わせていた。

 由佳里のすぐ側には、寄り添って横たわる奈緒の姿がある。彼女は、由佳里と同じく右側を下にして、右手を由佳里の右肩に起き、左足を由佳里の左太腿にからめて、丁度由佳里の背中に自分の体を密着させるように寝ていた。そして開いた左手は、二人の体の間を股間へと伸びていた。

 彼女の濡れて透けたショーツ越しに、もぞもぞと蠢く指が見える。由佳里にぴったりと寄り添いながら、奈緒は熱い吐息を漏らした。

「はあ…… んっ……」

 由佳里の体を愉しむ中で、いつしか奈緒自身も興奮していた。由佳里が絶頂を迎えても、奈緒の体の興奮は鎮められる事はなく、刺激を欲してやまない。甘いうずきを堪えきれなくなった彼女は、自分の指で体を慰め始めていた。

(せん、ぱあい……)

 静かに横たわる由佳里の邪魔にならないよう、ひそやかに、奈緒は自分を慰めた。ショーツの中に伸びた左手は指先だけを動かし、最小限の動きで欲望の昂ぶりに答える。ぱっくりと開いた花弁の周りを丹念に擦り、痺れるような熱い感覚をじわじわと全身に伝えていった。恥部とそこを弄る指は、堰を切ったように溢れ出た愛液にべっとりとまみれ、指の動きに合わせてちゅくちゅくと卑猥な音を立てていた。

 熱い痺れがゆっくりと背筋を遡るにつれ、彼女の体はより強い刺激を欲するようになった。左手の動きがより大胆になり、擦るだけに留まらず、時折爪を立てて弄び始めた。

(だめ…… 声出ちゃう……)

 奈緒は歯を食いしばり、右手を口に当て、漏れ出そうになるよがり声を耐えた。しかし、欲望の渦は益々強く逆巻く。鼓動に合わせて耳の奥がじんと熱くなり、体はびく、びくと震え始めた。

 左手の動きを、止める事ができない。恥丘を掌で覆うようにして秘部に指を伸ばしていた手が、今や手全体をゆっくり動かして刺激をもたらしていた。掌と指先に力を入れて股間を強く押さえ、次に、力を抜きながら軽く爪を立てて指を引く。意思を持ったようなしなやかな手の動きが、彼女の理性を削り取っていった。

 そしてついに、彼女の左手は、彼女の敏感な陰核を捉えた。

「んあっ!」

 一際強い刺激に、快感の喘ぎが喉からほとばしり、体が大きくびくん、としなる。しまった、と思った次の瞬間、由佳里の体がもぞり、と動いた。

「友野さん……あ」

「せんぱい……」

 顔だけを動かして奈緒を見た由佳里が、彼女の行為に気付いて止まった。ばれてしまった、という羞恥心が奈緒の心に広がった。しかし、猛り狂う欲望の獣は静まるところを見せず、さらなる刺激を求めて彼女の中で暴れた。背筋にざわざわと不快感が起こり、額から汗が噴き出した。

「……私が、してあげる」

 先に動いたのは、由佳里の方だった。一瞬戸惑う奈緒に、由佳里はさらに言葉を継いだ。

「今日だけ、ね。……さ、起きて」

 奈緒の心が、甘く燃えた。うっとりとした表情になり、由佳里をじっと見る。立ち上がった由佳里は、そんな奈緒の手を引いて立ち上がらせた。

「向こう向いて」

 奈緒の肩を手で押すようにして軽く促し、反対側を向かせる。そうして由佳里は、背後からやんわりと奈緒を抱きすくめた。

「ちょっと待ってて……」

 そう言うと、由佳里は奈緒の胸の前で両手を合わせ、水をすくうお椀のような形にした。そこへ、奈緒の肩越しに、口に溜まった唾液をたらたらと垂らした。唾液を溜めると、今度は両手をもみ合わせて掌と指にまんべんなく唾液を塗りつけていった。粘性のある唾液は時折糸を引き、また空気を含んでぐちゅぐちゅと音を立てた。

 準備を終えると、由佳里は、唾液にまみれた手をゆっくり奈緒のブラの下へ差し入れていった。

「……ふあああっ」

 途端に、えも言えぬ感覚が胸から背筋へと広がり、奈緒は思わず肩をすくめてぶるぶると震えた。粘り気のある唾液は、まるでローションのようで、奈緒の肌にぬるぬるとした卑猥な感触をもたらした。

 奈緒の乳房を由佳里の両手が包みこみ、下から上へと規則的に揉んで行く。それはあまり工夫のない動きではあったが、にゅるにゅるとした肌の感覚が猥褻な快感をもたらす。随分前から固くなっていた乳首は、粘液にまみれて指にしごかれ、びりびりと来る刺激を彼女に与えた。

 さらに、由佳里の温かい吐息と舌が、奈緒の耳を襲った。由佳里はたっぷりとした唾液で奈緒の右耳を濡らし、吐息を吹きかけながら舌先でちろちろと舐める。耳の穴を直に責められ、慣れない刺激に奈緒は思わず身をよじった。

「ひゃうんっ!」

 しかし、由佳里は逃がさない。腕に少し力を込めて奈緒を抱きすくめ、丹念に胸を愛撫しつつ、舌が奈緒の耳を追った。

「大丈夫…… すぐ慣れるわ」

 身をよじり頭を垂らして逃げようする奈緒を、由佳里は自分の左腕のところに追い詰めた。左の二の腕と頭で奈緒の頭を挟むようにして、じわじわと奈緒の右耳を責める。

 それはくすぐったいとも言える感覚だが、熱っぽいものを含んでいた。責められた耳は敏感に反応し、かすかに不快なぞくぞくと来る感じをもたらした。しかし責められる内に、うなじが熱く痺れるような錯覚を覚え始めた。

「いやあ…… おかしくなっちゃう……」

 奈緒の抵抗がなくなると、由佳里は続けて左の耳をも舐め始めた。胸と耳を同時に責められ、うなじの痺れは背筋を犯して全身に染み渡る。快感の高まりに秘部がじくじくとうずき、上半身への刺激と合わせてさらに奈緒を溺れさせる。

 彼女の秘部が熱くうずき、それがどんどん大きくなっていった。秘部は直接弄られ刺激されることを求め、奈緒の体が刺激を受けて体が痙攣するたびに、体から力を奪って膨れ上がって行った。奈緒は、がくりと折れそうになる足に残った力を込め、必死に立ち続けた。

「せ、せんぱ……あたし……」

 奈緒の目の前に白い霞がかかり始める。膝からは力が抜ける寸前、かくかくと震えていた。手は、拳を作って体の両側でぴんと突っ張っていた。秘部のずくんとくるうずきは狂おしいほど大きく、堪えようとしなければたちまち押し流されてしまう。

 由佳里が何事か話しかけたようだったが、立っているだけでやっとの奈緒の耳には届かなかった。不意に奈緒は、背後から強く抱き締められるのを感じた。強い力でぐっと引き上げられ、わずかな間、きちんと立った姿勢になる。自分を抱く腕が離れた次の瞬間、ヒップのところに、ショーツに潜り込む手の感触があった。

 プールサイドに崩折れそうになる自分の体に、背後から腕が回される。腕は腹部を巡って奈緒を抱き寄せ、体をぴったりと密着させ、そうしてようやく奈緒は立っている姿勢を維持できた。その間も、ショーツに侵入した手は、ヒップを通り過ぎ、下へ下へと潜って行く。

 背後からねじ入れられた手が、ついに恥部へと達した。もそもそと動き回る指の存在を感じ、奈緒は淫らな期待で胸を膨らませた。甘い欲望の罠に陥った奈緒は、もはや何も考える事ができずにいた。

 しばし蠢いた指は、一旦ふと動きを止めた後、おもむろに指先で強くクリトリスを押さえた。

「んぐうっ!」

 背後に立つ人物に完全に身を預け、彼女は秘部をいじられるがままだった。焦点の合ってないとろんとした目で屋内プールの屋上を見上げ、股間から愛液の雫を滴らせながら、奈緒はあられもなく悶え、快感によがった。

「はあ、あひい、あん、いい、もっとお」

 指で転がされるにつれ、肉芽は充血して固くなり、さらに膨れ上がる。こりこりとしこって行くのに合わせて、指の動きは大きく激しくなって行った。ぬちゅ、くちゅ、という猥音が奈緒の声に混じって響く。ずんと来る強い刺激に、彼女は言葉にできない快感を味わい、体を硬直させた。

「そこは、あっはああっ、かはぅ」

 彼女の四肢がぴんと硬直し、ぶるぶると震える。指は、転がすような動きから前後にグラインドする動きへと変わり、しかも次第に動く間隔を狭め、奈緒を白い嵐の中核へと導いていった。

「あ、あぐっ、んっんっ、んんぐううううううっ!!」

 

 最後の瞬間は、奈緒の記憶にない。ただ、すべてが終わった後、プールサイドに寝かされた自分の髪を、由佳里が愛しげに撫でていた事は覚えている…

 

6.それから

 夏のとある日曜日、県の総合運動プールにおいて、大会が開催された。選抜選手を始めとする水泳部の面々も、そこに揃っていた。

 プールには選手や審判、役員が居並び、競技が進められている。選手以外の部員や応援の生徒達は、プールよりも一段高い観客席にいて、母校の選手に盛んに声援を送っている。そこには奈緒の姿もあった。ただし、水泳部員としてではなく、応援に来た一高校生として。

 今、目の前のプールでは、個人メドレーが始まろうとしている。第1コースから順に選手がコールされ、その中には水上舞の名前もあった。奈緒は観客席の端に1人で座り、眼前のプールをじっと見つめた。

 あの事件の後、彼女は水泳部をやめた。事情を知らないほとんどの部員や顧問の教師は、とても信じられなかったようで、なんとかして思いとどまらせようとあれこれ説得を試みた。がしかし、彼女は翻意しなかった。

 もう、元には戻れないから。これ以上壊さないためには、離れるしかないから。退部の理由を知っているのは由佳里と舞、2人だけ。別れを告げた最後の日、由佳里は悲しそうな顔をして黙って奈緒の頭を抱き寄せ、舞は無表情に顔を背けた。

 奈緒は視線だけを動かし、観客席の真ん中辺りを見た。彼女は、斜面状になった観客席の中でも上段の端、いわば隅の方に座っている。一方観客席の下段や、中央寄りの席には、参加各校の部員や応援の生徒達が集団で陣取り、大きな声を上げている。その中に、もしかしたら奈緒も居たはずの、母校の水泳部の姿もあった。後ろ姿だけを見ても誰が誰だかはよく分からないが、そこに由佳里がいるのは間違いなかった。

 懸命の練習にもかかわらず、由佳里は大会選手には選ばれなかった。今大会を最後に、3年生は引退する。結局由佳里は、3年間ただの1度も晴れの舞台で記録を競う事はできなかった。

 もし由佳里が、新入生の指導をせず、自分の練習に打ち込んでいたとしたら。もしかすると、選手として最後を飾れたかもしれない。あるいは、やはり無理だったのかもしれない。だがいずれにしても、由佳里は新入生の指導に熱心に取り組んだ。今大会に参加している2年生部員の中には、まさしく由佳里が育てたと言ってもいい部員もいる。そしてそれは、現1年の部員にも言える事だった。

(せんぱい…… ごめんなさい。私、逃げる事しかできなかった……)

 速く、上手く、なりたかった。自分のためにも、部のためにも、そして由佳里のためにも。しかしそれを壊したのは――自分。

 審判の長い笛の合図が、会場に響いた。合図を受けて、選手が飛び込み台に上がる。

「用意!」

 選手が、飛びこみの姿勢を取る。

 スタートを告げる電子音が鳴り響き、選手が一斉に飛び込んだ。会場がどっと湧き、一際大きな声援が降り注ぐ。奈緒はプールを見、次いで部員達の方を見、またプールを見た。

「……先輩、がんばって」

 私も、がんばるから。いつかまた、笑って会えるように。

 奈緒は、2人に向けて、手を振った。

 
 
FIN
 
 
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